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財務・経理

限界利益とは?計算方法や考え方についてわかりやすく解説

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限界利益とは?計算方法や考え方についてわかりやすく解説

限界利益は、経営者やビジネスオーナー、マーケティング担当者など、企業経営や戦略に携わる方にとってメリットが大きい情報です。限界利益の理解は、新商品の導入や価格設定、生産量の最適化などの経営判断に役立ち、収益性の向上につながります。本記事ではビジネス成果を高めるヒントを提供します。


この記事を読んでわかること
・限界利益と限界利益率、損益分岐点が分かると事業存続のために必要な売上が分かる
・損益分岐点を具体例で理解できるので、自分の事業に当てはめて考えられる
・損益計算書におけるさまざまな利益を理解できる


限界利益と限界利益率

限界利益と限界利益率

限界利益と限界利益率は、企業経営において重要な概念です。
経営者やマネージャーは、限界利益と限界利益率を常に把握し、意思決定に活用することが重要です。
収益を最大化してコストを最適化し、効果的な戦略を策定する上で欠かせない指標となります。これらの概念を理解し適切に活用することは、企業の持続的な成長と競争力の向上の役に立つはずです。

限界利益とは

限界利益とは、売上高から原価にかかった変動費だけを引いて残ったお金のことです。
商品やサービスを販売した際に直接得られる利益とも言い換えることができます。事業が継続できるか否かの見込みを立てるときや、人件費や広告宣伝費をどれぐらい使えるかを考える際に必要となる数字です。
また、限界利益は売上と連動して動きます。限界利益が赤字だと、そもそも事業が成り立っていないと判断することができます。変動費が高すぎると、限界利益は少なくなってしまいます。限界利益を把握することで、変動費が適正か知ることができますので、限界利益の計算式を知っていることは企業経営において非常に大切です。
限界利益は、以下の計算式で求めることができます。

限界利益 = 売上高 - 変動費

【具体例】
例えば、1個1,000円のネジがあったとします。
ネジ1個における変動費は500円だったとします。
ネジが1個売れたときの限界利益は以下の計算式で求められます。

売上1,000円-変動費500円=限界利益500円

もしネジが100個売れたときの限界利益は、以下のようになります。

売上1,000円×100個-変動費500円×100個=限界利益50,000円

このように限界利益は、売上に連動します。
限界利益の中には固定費が含まれており、限界利益から固定費を支払わなければなりません。限界利益から固定費を引いてお金が残るかどうかの境目は経常利益と呼ばれており、こちらも非常に大切な指標になります。

限界利益の「固定費」と「変動費」

固定費と変動費を理解することは、経営や予算策定、収益最大化において非常に重要です。固定費と変動費の違いを理解することで、コスト構造を把握し、無駄なコストを削減することが可能となります。
また、収益の増加に対して必要最低限の販売量や生産量を把握し、利益を最大化するための計画を立てることができます。
固定費と変動費を適切に分析し、事業の健全な運営や投資判断に活用することが重要です。これらの費用の特性を理解することで、経営戦略の立案や意思決定がより合理的かつ効果的になります。

・固定費とは
固定費とは、売上高に関係なく一定して発生する費用のことです。
上記と同じくネジの例で考えてみましょう。もしネジの売上が倍になったとしても、すぐには工場の維持費や人件費は変わりません。 このように、売上と直接連動しない費用を固定費と言います。固定費は売上が増えても変わりませんが、減っても変わりません。
ネジが全く売れなくても、工場の維持費や人件費がかかってしまいます。また固定費はいったん増えてしまうと減らすのが大変で、利益を圧迫しかねません。製造業などの業種が、多少コストがかかったとしても生産を外部に委託するのは、固定費をあげないための施策とも言えます。

・変動費とは
売上に比例して変動する費用のことです。
引き続きネジを事例に考えてみましょう。もしネジの売上が倍になったとすると、ネジを作るための原材料も倍の量で仕入れる必要が出てきます。このように、変動費は売上と連動します。
変動費と似た言葉に「原価」という言葉があります。変動費は具体的には材料代や、外注加工費のことを言います。一方で、原価とは商品を作るのにかかるすべての経費のことを言います。具体的には商品を作るために必要な機材のリース代などを含みます。
変動費と原価は別物ですので、混同しないようにしましょう。

限界利益率とは

限界利益率とは売上に占める限界利益の割合のことで、限界利益率は以下の計算式で求めることができます。

限界利益率(%) = 限界利益 ÷ 売上高×100

限界利益率が大きくなると、収益性が向上します。つまり、変動費を抑えられれば利益が出やすくなる、と言い換えることができます。 限界利益率の求め方を押さえておくと、適切な価格設定やコスト効率を知ることができます。

限界利益以外にどんな利益がある?

限界利益以外にどんな利益がある?

限界利益以外にも「○○利益」とつくものは、多数存在します。
それぞれの「○○利益」とつくものについても押さえておきましょう。

売上総利益

売上総利益は、売上高から原価を引いて残った利益です。粗利と呼ばれることも多いです。以下の計算式で求めることができます。

売上総利益=売上高-売上原価

売上原価は、販売した商品をいくらで用意したのかを表しています。製造業であれば、自社の製品をいくらで作ることができたのか、を表しています。
売上原価の中には、商品を作るための人件費や場所代、電気代などの水道光熱費も入ります。変動費とは異なりますので、注意しましょう。

営業利益

営業利益は、本業での儲けを示すものです。以下の計算式で求めることができます。

営業利益=売上総利益(売上-原価)-販売管理費

販売管理費を以下に説明します。
企業は商品を作っただけでは利益は生まれません。販売してはじめて売上がたちます。売上をつくるために、営業部員が売り込みに行ったり、商品を知ってもらうために広告を打ったりと、さまざまな販促活動をします。
また、オフィスや事務員、パソコンやタブレットなどの備品も必要です。これらの販売にかかる費用をまとめて「販売管理費」と言います。
営業利益は、販売管理費まで含めた本来の事業でどれだけ稼いでいるかを示した指標です。本業が上手くいっているかどうかがわかるので、経営において最も重要な指標になります。

経常利益

経常利益は、企業の財務活動まで含んだ利益を表したもので、以下の計算式で求めることができます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

企業は、本業以外でも利益や費用が発生します。営業外利益の具体例としては、銀行に預けているお金の利息や、本業とは別で賃貸経営しているアパートの収益、株や債券の配当、為替差益などがあげられます。
一方で営業外損失の具体例としては、銀行から借入をしている分の利息や、債権の一部を免除する売上割引、為替差損などがあげられます。 経常利益とは、こういった企業の本業以外の損益を反映させた数字になります。

税引前利益

税引前利益は、税金を支払う前の利益です。以下の計算式で求めることができます。

税引前利益=経常利益+(特別利益- 特別損失)

特別利益や特別損失には、固定資産売却益/損、子会社株式売却益/損などがあげられます。特別利益や特別損失は毎期あるわけではないので、経常利益がそのまま税引前利益になることも少なくありません。

税引後利益

税引後利益とは、法人税などの税金を引いて残った利益です。以下の計算式で求めることができます。

税引後利益=税引前利益-税金

ここで引かれる税金は、法人税のほかに、法人住民税や事業税があります。その他の固定資産税や印紙税などの税金は、租税公課という課目で先に説明した販売管理費に含まれているので、ここでは引かずに計算していきます。

当期純利益

純利益は、企業経営の最終的な結果を表したものです。以下の計算式で求めることができます。

当期純利益=税引前当期純利益-法人税などの税金

売上から原価や販売管理費、営業外費用、特別損失などの費用を引き、営業外収益、特別利益を反映させ、最後に税金を引いた後に残った金額なので、非常に重要な数字です。
税金によって当期純利益が変わってくるので、経営において税率は無視できない事項になっています。

限界利益と限界利益率から何がわかる?

限界利益と限界利益率から何がわかる?

限界利益と限界利益率を知ることにはさまざまなメリットがあります。例えば最適な生産量・販売量の把握、価格設定の最適化、製品・サービスの重点化、コスト効率の向上、収益予測とリスク評価、意思決定の裏付けなどです。
これらのメリットを活かすためには、正確なデータの収集と適切な計算が必要です。限界利益と限界利益率の理解を深めていきましょう。

商品やサービスの適正な価格

限界利益と限界利益率は、商品やサービスの適正な価格を評価する際に重要な指標です。
限界利益は、販売数によって企業が得ることができる利益を示すため、価格設定や販売戦略の決定に重要な役割を果たします。
限界利益率は、商品の価格戦略やマーケティングの効果を把握する上で有用です。高い限界利益率は、売上に対して利益が大きくなることを示し、収益性の向上に寄与します。
商品の適正な価格を決定する際には、限界利益と限界利益率を考慮します。適正な価格は、製造や仕入れのコストをカバーするだけでなく、追加の販売によって得られる限界利益を最大化するように設定する必要があります。
また、競合他社の価格や市場の需要と供給の関係も考慮しながら、バランスの取れた価格設定を行うことが重要です。

会社にどれくらいの利益が残るか

限界利益と限界利益率は、企業にどのぐらい利益が残るかを把握する上で重要な指標です。
その理由は主に4つです。

製品単位の収益把握が可能
限界利益は1つの商品を追加で販売した際の利益を示すため、製品ごとに収益を把握することができます。収益性の高い商品や低い商品を特定し、戦略的な製品ラインナップを構築できます。

価格戦略の評価
限界利益率が売上に対する利益の割合を示すため、価格戦略の評価に役立ちます。

コスト管理
限界利益は変動原価を考慮して計算されるため、商品の販売に伴う追加の変動費用を把握できます。コスト管理を強化して、効率的な経営を行うことができます。

利益最大化の判断が可能
限界利益を分析することで、追加の販売やコスト削減によって利益を最大化する方法を見つけることができます。売価や販売戦略の調整によって、最適な利益を達成するための指針となります。

限界利益と限界利益率の理解により、企業は収益性を向上させるための戦略を立案し、収益の最大化を目指すことが可能です。

直接的な利益がどれくらいか

限界利益と直接利益は、企業の収益とコストに関連する重要な概念です。
直接利益は、企業が製品やサービスの販売によって実際に得ることができる利益のことを指します。一方で限界利益は、追加の販売量や生産量によって得られる利益の増加を示す概念です。
企業が製品を1つ販売する際の直接利益と、その1つの追加販売によって得られる限界利益は、同じ金額になります。直接利益が高ければ、収益が増加します。
しかし限界利益率が低い場合、追加の販売量が増えても利益が十分に増えないことがあります。そのため、限界利益率を考慮して、収益最大化の戦略を立てる必要があります。

事業が存続できるかどうか

限界利益と限界利益率は企業の存続か廃業かの基準を評価する上で極めてシビアな要素です。
限界利益は、収益性を判断する際に不可欠です。収益が低く、限界利益が見込めない商品や事業は、持続可能性を考慮して見直す必要があります。
限界利益率は価格戦略の評価に影響を与えます。利益率が低い商品やサービスは、競争力を維持できずに廃業のリスクが高まります。
販売数量によって利益が変わることから、販売計画の適正な設定が重要です。需要の予測を誤ることが廃業の要因となる場合があります。十分な販売が見込めずに生産・仕入れを行うことは、経営に大きなリスクをもたらす可能性があります。

限界利益-固定費が0になる「損益分岐点」とは

限界利益-固定費が0になる「損益分岐点」とは

損益分岐点を把握することで、企業の収益を得るために必要な最低限の販売量や生産量を把握し、リスクを最小限に抑えたり、新規事業の計画を立てたりすることが可能です。
具体的には収益目標の設定やリスク管理、計画立案や投資判断、プライシング戦略などを損益分岐点から判断することができます。損益分岐点を知ることで、経営戦略の立案や収益最大化に向けた意思決定をより根拠に基づいて行うことができます。

損益分岐点とは

損益ゼロのプラスマイナスゼロ状態のことです。
ビジネスの世界で「採算が取れる/取れない」という言葉がありますが、損益分岐点は採算が取れるかどうかの境目です。売上が損益分岐点を超えれば利益を出せます。損益分岐点をもとに、会社が最低限いくらの売上が必要か分かるのです。
損益分岐点の求め方は以下の通りです

損益分岐点=固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率=限界利益(=売上高 - 変動費)  ÷ 売上高

【具体例】
あるラーメン屋さんは1杯1,000円のラーメンを出します。
ラーメンの原価は500円、人件費や店舗の家賃などの固定費は月に100万円かかるとします。
お店の売れ行きは好調で、1日100人の来客があり、月に25日営業をして2,500杯ラーメンを売るものとします。すると月の売上は250万円、変動費は125万円。

原価は小麦粉やスープなどのラーメンにかかるものだけと考えて、原価=変動費で考えます。
このラーメン屋さんの損益分岐点を計算します。

限界利益率 = 125万円 ÷ 250万円  限界利益率は0.5
損益分岐点 = 100万円 ÷ 0.5  損益分岐点は200万円

このラーメン屋の損益分岐点は200万円で、250万円売り上げていると利益が出ている、と言えます。
このように損益分岐点は計算して出すことができます。

損益分岐点から判断できること

損益分岐点を知ることで、事業を継続するために必要な売上を逆算できます。損益分岐点を割ってしまった場合の対策は主に3つあります。

・固定費や変動費の改善ポイント
売上が損益分岐点を下回ってしまったときに、事業を改善するためのポイントは3つあります。

1:売上を上げること
効果的な広告や営業、付加価値の高いサービスや製品の開発で売上をあげていくことを考えます。

2:固定費を減らすこと
人件費や家賃などの見直しで、固定費を減少させます。

3:変動費を減らすこと
材料費のコストダウンや、仕入れ費用を圧縮する工夫をして、変動費を減少させます。

全て手を付けていく必要もあれば、売上が足りていない、固定費だけ高い、変動費だけ高い、という場合もあります。
変動費は高いか安いか判断しづらいので、同業種と比べて変動費の割合が高すぎないかを確認しておくと安心です。

・売上高がどれくらいで利益が出るのか
このぐらいの売上があれば利益が出ます、とは言えません。事業ごとに変動費や固定費が違うからです。
事業ごとに損益分岐点を計算して、必要な売上高を計算する必要があります。
先のラーメン屋の例を出すと、損益分岐点は200万円でした。この場合は売上が200万円以上であれば、利益を出すことができる、と言えます。

・固定費を回収できる限界利益率の数値
売上を上げれば利益は出ますが、売上を上げるにも限界があります。その場合には、限界利益率がいくらになれば固定費を回収できるか検討する必要があります。
先のラーメン屋の例で、売上が180万円しかなかった場合を考えます。固定費は変わらず100万円のままです。
損益分岐点が200万円なので、このままでは20万円の赤字になってしまいます。売上と固定費が変わらないままで利益を出そうとするならば、変動費を下げることを検討する必要があります。
損益分岐点を180万円にするために、限界利益率から逆算して変動費を算出します。限界利益率は56%でなければならないので、変動費は80万円になります。変動費はいくらまでに抑えないといけないかが見えてきます。

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おわりに

売上から変動費を差し引いた限界利益の把握は、経営戦略において極めて重要です。限界利益がプラスの場合、販売が企業に利益をもたらすことが分かります。
逆に、マイナスの場合は、生産や販売によって損失が発生する可能性があります。経営者は限界利益を考慮に入れ、価格設定や生産量の最適化など、効果的な経営戦略の策定に活用することが大切です。限界利益の最大化に努めることで、企業の収益性向上と持続的な成長を実現することができます。