試算表とは? 必要性から種類の違い、書き方&見方を分かりやすく解説
決算等において作成義務はありませんが、試算表によって経営状況の把握や経理ミスの有無を確認できます。また、試算表は財務諸表を作る際にも役立ちます。
この記事では試算表の概要について説明します。
試算表とは?
試算表とは、総勘定元帳から数字を転記して作る集計表です。
主に転記や仕訳、計算ミス等がないかを確認するために使用されます。試算表では借方と貸方の数値が最終的に一致する仕組みになっているため、一致しない場合は何かしらのミスがあることになります。
試算表は決算書(財務諸表)を作成する流れの中で作成されるのが一般的です。決算書の作成フローは以下の通りです。
1.会計上の取引を「仕訳帳」に記録する
2.『売上』『仕入』などの項目ごとに「総勘定元帳」に記録する
3.すべての項目と金額を集計した「試算表」を作成する
4.「決算書」を作成する(損益計算書・賃貸対照表・キャッシュフロー計算書)
決算書が12ヵ月分の集計であるのに対し、試算表は3ヵ月、6ヵ月といった途中経過の集計表になります。つまり、試算表によって直近の経営状態をみることができます。
試算表がなぜ必要なのか
試算表を作成するメリットは主に以下3つの通りです。
経理上のミスが確認できる
試算表では、借方と貸方の数値が最終的に一致する仕組みになっているため、一致していない場合は何かしら経理上でミスが発生していることになります。
決算書作成において試算表の作成は義務ではありませんが、経理上のミスを事前に防ぐためにも作成した方がいいでしょう。
経営の指標になる
試算表では日毎・月毎の資金の流れや、売上の増減を細かく確認できます。
日頃から会社の経営状況を具体的な数値から把握することで、対応策などの指針も立てやすくなります。
資金調達の際のデータとして活用できる
月次で作成される試算表は、決算書よりも直近の会社の経営状態を表しているので、資金調達を行うときに有効なデータとして活用できます。より具体性のある数値を提示できるので、説得力が増し、よりスムーズに資金調達が行えるでしょう。
試算表の種類と作り方
試算表には主に3種類あります。
合計試算表
合計試算表とは、総勘定元帳における「借方の合計金額」と「貸方の合計金額」を集計した試算表です。各勘定科目の金額とその合計額を記載します。
作り方
①総勘定元帳に記載されている金額を勘定科目ごとに借方と貸方と分けて計算する
②合計試算表に転記
メリット・デメリット
総勘定元帳の転記が正確であれば、借方合計と貸方合計が必ず一致します。
会社が一定期間に取引した合計金額が把握できるため、転記漏れや転記ミスが発見しやすいのが特徴です。
ただし、合計試算表は残高をすぐに確認したい場合には向いていません。
残高試算表
残高試算表とは、各勘定科目の借方と貸方の金額の差額である「残高」を集計した試算表です。借方合計と貸方合計が必ず一致する仕組みになっています。
作り方
➀総勘定元帳における各勘定科目の借方と貸方の合計金額を計算する
②借方と貸方の各合計金額を比較し、大きい金額から小さい金額を引いて残高を計算する
③残高試算表に転記する
メリット・デメリット
残高試算表には次の2つのメリットがあります。
・会社の損益状態や経営状況を把握できる
・財務三表のうち「貸借対照表」と「損益計算書」を作成するためのベースとなる
残高試算表は3種類の試算表で最もスッキリとして見やすいですが、転記ミスなどの細かいミスには気付きにくいです。
合計残高試算表
合計残高試算表とは、合計試算表と残高試算表をまとめた試算表です。作成するのに手間がかかるものの、合計と残高が一目で分かります。
作り方
➀総勘定元帳における各勘定科目の借方と貸方の合計金額を計算する
②借方と貸方の各合計金額を比較し、大きい金額から小さい金額を引いて残高を計算する
③➀で計算した金額を合計計算表部分、②の計算した残高を残高計算表の部分に転記する
試算表と他の書類との関係性
決算書は正式には「財務諸表」と呼ばれており、財務諸表のうち貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を「財務三表」といいます。
試算表を作成することで、財務三表の内、賃借対照表と損益計算書を作成することができるようになります。賃借対照表と損益計算書を作成する際は、合計残高試算表があるとよりスムーズに作成できます。
なお、試算表と貸借対照表、損益計算書では、記載されている科目が異なります。どの科目を見たいかによって、それぞれの表を作成しましょう。
試算表 ⇒ 帳簿に記載されたすべての科目
貸借対照表 ⇒ 資産や負債などの貸借だけをまとめた科目
損益計算書 ⇒ 売上や経費などの損益科目
賃借対照表
賃借対照表は「バランスシート」とも呼ばれ、決算時における会社の資産と負債の残高が確認できる書類です。
賃借対照表は以下3つの部に分かれています。
・資産の部:資金運用の状況
・負債の部:資金調達の状況
・純資産の部:返済義務のない資本
貸借対照表では、会社の「資産」「負債」「純資産」の3点で良いバランスが保たれているどうかを確認することができます。
各部において金額に大幅な偏りがある場合、不良債権が放置されていたり、資金繰りに苦戦している可能性があります。
損益計算書
損益計算書は、会計年度1年間の収益や費用、そして利益が分かる書類です。英語名の「Profit and Loss Statement」を略して「P/L」とも呼ばれています。
損益計算書には、売上、費用、利益等が記載されており、決算時に収益から費用を差し引いた利益がどれくらいあるのかを把握できます。
そして、損益計算書では費用を固定費と変動費に分けることによって「損益分岐点」を見ることができます。収益分岐点とは会社において利益がゼロ(売上=費用)になる点のことであり、次の計算式で算出できます。
損益分岐点 = 固定費 ÷{1—(変動費÷売上高)} |
損益分岐点が分かれば、それを改善するために固定費もしくは変動費を下げる等の改善策を見出すことができます。
賃借対照表と損益計算書について詳しくは「意外と知らない決算書の見方~事業家・経理担当なら知っておくべき読み方のポイント~ 」で解説しています。
試算表の見方
ここでは、試算表を見るときのポイントを2つ紹介します。
経理上のミスをチェックする
試算表は、合計試算表と残高試算表、合計残高試算表の3種類がありますが、どの試算表であっても借方合計と貸方合計は常に等しくなります。
もし借方合計と貸方合計が一致しない場合、何らかの経理上のミスが発生していることになります。
会社の損益や資産状況をチェックする
試算表にはそれぞれの勘定科目がありますが、「売上」を含む下項目を「損益科目」、「売上」を含まない上の項目を「残高科目」といいます。
「残高科目」ではどれくらいの財産があるのかが分かります。
残高科目の左側(借方)の金額= 会社の資産 残高科目の右側(貸方)の金額= 会社の負債 |
つまり、貸方残高合計よりも借方残高合計が上回った場合、その会社は負債の方が多いということになります。
「損益科目」では、試算表の期間中にどれくらい利益が見込めるのかが分かります。
損益科目の左側(借方)の金額= 会社のコスト
損益科目の右側(貸方)の金額= 会社の収益 |
つまり、貸方残高合計よりも借方残高合計が上回った場合、その会社は赤字であることが分かります。
このように、「残高科目」「損益科目」に分けてみることで会社の状態と収益見込を読むことができます。
また、試算表を月ごとに作成していれば、その推移から成長性も分析できるでしょう。
試算表を作成する時期
試算表はいつ作成しても問題はありません。そもそも作成義務はないので、必要になるタイミングで作るのも良いでしょう。
一般的には以下の時期に作成する会社が多いです。
・区切りの良い時期
・決算期前後
区切りの良い時期
具体的には以下のようなタイミングです。
・月次
・四半期
・半期
取引量が多い場合は、週次で作っても良いでしょう。
決算期前後
試算表は決算時に必要な貸借対照表と損益計算書(P/L)を作成する際に参考になるため、決算期前後で作成する会社も多いです。
決算期前後に試算表を作成する場合、以下2つの試算表を作成しましょう。
・決算整理前の試算表
・決算整理後の試算表
前者は期中取引に関する転記の正確性をチェックするために、後者は決算整理事項に関する転記の正確性をチェックするために作成します。
まとめ
試算表は財務諸表のように作成義務はないものの、経営状況や経理上のミスを確認することができます。月ごとに経営状況の把握ができることはもちろん、正しい決算書を作成するためにも、こまめに試算表を作成しておくとよいでしょう。