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「コストカット」のやり方は?経営者が頭を悩ませるカットしてよいもの・悪いもの
コスト削減をする上で知っておきたい基本的なこと
コストカットを考える上で、知っておきたい基本的なことを理解しましょう。
そもそも「コスト」とは何か?
損益計算書を見ると、売上収益の下に原価、販売費および一般管理費、営業利益が続きます。この「原価、販売費、一般管理費」の項目が広義の上ではコストとなります。
コストカットのキモは経費を正しく管理するということ
上記で説明したように、コストの種類は営業活動で発生する費用すべてであり、多岐にわたります。しかし、むやみにコストカットを行うと営業活動に支障が出る、業務効率が下がるなど逆効果になる場合もあり、注意が必要です。
コストカットをする上では経費の正しい管理が重要となります。つまり、本来不要な経費が使われていないか、前期(前月)と比べて急増した項目は何か、その項目の支出は本当に必要かといったことを随時確認することが重要となります。
コストカットの対象は全部門、すべての項目が対象となり得ます。経営者が陣頭指揮をとって、会社として取り組むことであり、一時的なものではなく継続的な活動といえます。
経費が正しく使われているかを知るための視点、3M(ムダ・ムラ・ムリ)とは?
経費が正しく使われているかをモニタリングする上では可視化が必要となります。そのための視点として持ちたいのが、3M(ムダ・ムラ・ムリ)です。
ムダは、過剰な在庫や物流費、使っていない会議室に使用する光熱費などが該当します。ムラは、生産性や稼働率が安定しないことを意味します。ムリというのは、能力以上に負荷がかかっている状態で、機械の故障の原因だったり、従業員であれば不満が募り離職の原因になったりするものです。
理想的な状態は、能力・キャパシティと業務負荷が均衡している状態を指します。能力が余っていてはムダになりますし、負荷が多ければムリになります。また、バラツキが多い状態はムラと言えるでしょう。この視点を常に持つことが、経費を正しく使うことに繋がるのです。
コストカットでやるべき具体的な5つのこと
では、実際に、コストカットを行う上で、具体的にどのように進めればいいのでしょうか。
サービスそのものの見直し
効果が高いのが、サービスそのものの見直しです。長年赤字が続いている事業や、使われていないサービスなどを徹底して洗い出し、不要なサービスについてはできるだけなくす方向に努めるのです。
よくあるケースとして、商品の販売自体は黒字であっても、付き合いではじめたアフターサービスが過剰で結果として事業自体が赤字になってしまうことなどが挙げられます。この場合、アフターサービスを終了することで利益率が改善します。顧客との関係性もあるため、期限を設けて数ヵ月後に簡素化、有料化することをアナウンスするといった取り組みも有効です。本当に必要なサービスなのかどうか、一つひとつ見極めることが重要でしょう。
業務フローの見直し
次に行うのが、業務フローの見直しです。全社の業務を洗い出し、どの業務にどのくらいのコスト(ヒト・モノ・カネ)が掛かっているのかを探ります。
ここでのポイントは、「改善」ではなく「見直し」をすることです。よくあるアプローチが、「検品工程で、1時間あたり100個検品していたものを、効率化して120個にする」という発想ですが、確かにこれも効率化に間違いありません。しかし、100個のものを120個にするのは、個々人の努力によることが大きく、仕組み化されていません。
たとえば、想定リスクを洗い出し検品数を10分の1にするくらいの抜本的な見直しが求められます。善意ではなく、「仕組み」でうまくいくように業務フローを再設計することが効率化において重要です。仮にシステム等への投資が必要になったとしても、トータルコストが抑えられるのであれば、積極的に投資していくべきでしょう。
人件費の見直し
単純に人件費を減らすのは、モチベーションの観点からも良策ではありません。
業務効率化によって、正社員がやっていた仕事をアルバイトやパートにまわし残業代を減らす、業務そのものを外注して外注費として変動費化するといった取り組みが考えられます。モチベーションを下げずに、人件費を下げていくことが理想でしょう。
不動産費の見直し
不動産費や、設備費等の見直しは難しいと考えがちですが、工夫次第では十分に見直しが可能です。
たとえば、フリーアドレス制にして座席数を減らす、在宅勤務制度を導入するなどを通じて、コンパクトなオフィスが実現できるため賃料削減が可能となります。
さらには、不動産や設備を、「持つ」ことが正しいかどうかを考えた方がいいかもしれません。不動産は賃貸の方が安くつくかもしれませんし、設備もリースという選択肢があり得ます。コストカットをする上では、できるだけ柔軟な発想をとることが重要です。
一般経費の見直し
最後に一般的な経費の見直しです。たとえば交通費や出張費、光熱費、通信費などの細かい経費がこれにあたるでしょう。こういった経費は、とくに大きな工夫がなくても、従業員の細かい配慮や注意で、削減することが可能になります。ムダな契約をしていないかを改めるとともに、従業員一人一人の継続した努力が重要になるでしょう。
社内へコストカットを浸透させるためには?
先ほども述べましたが、基本的に、コストカットは、特定の人がやるものではありません。経営者を筆頭に、従業員全員で行うものであり、「どのように浸透させるか」が重要になります。
そこで重要なのが、「仕組み化」です。ただ、「コストカットを頑張りましょう」と伝えても、長続きはしません。たとえば、業務フローを変えてコスト削減に成功した人に褒賞を出す、日々の出張費や交通費の経費の削減の一部を従業員に還元するといった従業員のモチベーションを高めながら、コストカットに取り組める環境を作るのが経営者の役割だと言ってもよいでしょう。ポイントは、「仕組み化」と「還元」です。
削減余地が大きいコストカットは?
コストカットをするにあたって、具体的な手順を説明しました。しかし、コストカットにも、効率の良いコストカットと、やってはいけないコストカットがあります。では、効率の良いコストカットとは、いったいどのようなものでしょうか。
電気代・出張代などは削りやすい?
比較的コストカットの効果が出やすく、取り組みやすいのは、電気代や通信費、出張費や交通費でしょう。たとえば、使っていない部屋の電気を切る、温度設定を1℃変える、などは今すぐにできることです。また、出張の頻度を落とすことや、交通費を削るのも、そんなに難しいことではありません。
ただここで注意したいのは、やはり社員のモチベーションです。暑すぎたり寒すぎたり、暗すぎたりする環境では効率も落ちますし、出張を削って営業機会の損失があっては本末転倒です。出張をWebミーティングで代替するなど、社員に負担のかからない方法を探しながら行うのが良いでしょう。
コストカットできるのは「お金」だけではない
直接費用を削るのは、どの経営者も考えており、新しいアイデアが出てきづらいかもしれません。しかし、実は削れるのはお金だけではありません。
たとえば、書類の決裁承認を紙からWebに移行することで「紙で回覧する時間」の削減につながります。あるいは、出張を削減することで、「移動時間」の削減につながります。
また、支払いを電子化するというのも、お金以外のコストカットに繋がっています。たとえば、これまでは、請求書が発行されてからそれを確認し、銀行窓口まで支払いにいく流れでしたが、この業務は、手数料に加え、人件費、作業時間を含めると、目に見えないコストがかかることになります。一方で、法人カードで支払いをすれば、こういったチェックの時間などが短縮されます。実際、法人カードは、経費精算の効率アップの点などから、年々導入が増えているようです。
このように、「時間」や「労力」の削減も、長期的にはコストカットに繋がってくることが多く、お金という視点だけでなく、「時間」など、様々な視点からムダ・ムラ・ムリを探すとよいでしょう。
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やると失敗するコストカット例とは?
逆に、良くないコストカットはどのようなものか、解説します。
原材料費の削減
1つ目は、原材料費の削減です。もちろん原材料の見積もりをしっかりとって、品質が変わらないうえで削減するのはよいことです。しかし、削減が先に来るあまり、質を落とすというのは、本末転倒でしょう。原材料の質というのは、製品の競争力に直接影響を与えます。短期的な利益を得るために、長期的な利益を犠牲にしてはいけません。
人件費を削る
人件費の削減も、慎重にしたほうがよいでしょう。なぜなら、社員の給与というのは、モチベーションに密接に関わっており、モチベーションが下がると、結果的に生産性が下がることが多いからです。業務プロセスを見直し、残業代を減らすことや、外注して採用を抑えることはもちろん積極的に行うべきですが、人件費を削る上で社員の給料を下げることを検討する際は、慎重に行ったほうがよいでしょう。
負のスパイラルに陥る
最後に注意したいのが、「コストカット→売り上げ減少」の負のスパイラルに陥ることです。コスト削減を優先するために、売上を犠牲にしたとします。そうすると、生み出せる利益がさらに小さくなり、さらなるコストカットが必要となります。そしてコストカットの結果さらに売上が減少……というスパイラルに陥る例も珍しくありません。
一度失った売上を取り戻すのは難しいですし、企業の土台を支えているのは売上です。コストカットを行う際は、こういったスパイラルに陥らないよう、注意しましょう。
効率的なコストカットで企業体質を強くしよう
コストカットは、経営者にとって、常に考えなければいけないものです。しかしながら、過剰なコストカットは、モチベーションの低下や売上の減少を招きかねません。また、コストカットは、一朝一夕にできるものではありません。常に「ムダ・ムラ・ムリ」が発生していないか気を配り、新しい仕組みを作ることでコストを削減でき強い企業体質になっていくでしょう。